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月影ラジオ企画プレゼント★第三弾

【二月十二日:もうすぐバレンタイン】


場所:月の畔のカウンター席最奥


榛名「…………」

榛名(もうすぐバレンタインだ。でも彼女、西洋文化なんて知ってるのかな?)

榛名(知らなかったとしたらどういう風に話したら良いだろう)

榛名(二月十四日はバレンタインって言ってね……なんて話したら欲しいのがあからさま過ぎるしがっついてるみたいで格好悪い)

榛名(でもだったらどんな風に話せば良い? 二月に行われる有名な行事と言ったら何でしょう……とか、いや、節分とか言われそうな……)

榛名(あ、節分に撒く豆は最近麦チョコが流行ってるんだよ……とか言って、投げて貰ってそれを僕が口でキャッチするとか……)

榛名(って、もう節分過ぎてるから意味ないよ!! 他に二月って何!? 今年はうるう年だねとかそんな話題になってもおかしくないけど……)

榛名(そんな話題から一体どんな風にバレンタインやチョコに繋げろって言うんだよ!?)

榛名(あああああ……焦れば焦るほど思いつかない……っ!! ……こういうのは早い者勝ちだって分かってるのに……僕の馬鹿馬鹿馬鹿ーーー!!!)

榛名(……ホント、でも少なくともあいつよりは早く言わないと。絶対に……っ!!)




場所:月の畔のカウンター席一番扉側


望月「…………」

望月(女性が好きな男性にチョコレートを渡す日、“ばれんたいん”か……)

望月(……彼女は、誰かにあげたりするのかな)

望月(いや、まぁあそこまで気立ても良くて愛想も良ければ普通に色んな男性に言い寄られるだろうし、その中に付き合ってる人の一人や二人いても何もおかしくないですよね)

望月(おかしくないんです、けど……でも、彼女が誰かとそういう関係だなんて話聞いたこともないし、彼女が誰かを特別扱いしてるような姿も見たことないし……)

望月(だったら好きな人がいるけど想いを伝えられないとか、そういう感じだったり……いや、それなら顔に出る? ……それとも、大人の女性ならそういうの隠せるのかな)

望月(大人の女性か……やっぱり大人の女性なら大人の男性に想いを寄せるものなのかな。女性は守られたいものだとか良く聞くし……)

望月(…………。守るなんて俺には本当、ほど遠いな。俺がここまで生きてこれたのは、誰のお陰なんだって話だし……)

望月(彼女は、誰かに守られるのかな……チョコレートを渡すような人に、守られるのかな…………なんて、何を馬鹿なことを考えてるんだろう、俺)

望月(……ところでさっきから刺すような視線が痛い。幾ら意識されても意味ないんだけどな……)




場所:月の畔のカウンター席中央


神楽坂「…………」

神楽坂(春に近づいているな……。陽光の差す空や穏やかな時間だけでなく、若人も色めき立つ)

神楽坂(バレンタインまであと数日に迫り、二人とも分かりやすく女将を意識していて……可愛いものだ)

神楽坂(まぁ、望月に関しては俺がバレンタインについて吹き込んだのだがね)

神楽坂(女将にもバレンタインについての知識は授けておいたが、さて彼女は二人に一体どう出るつもりか……)

神楽坂(事実は小説よりも奇なりと言うし……ふむ、やはり愉しみなのだよ)




SE:月の畔の扉が開く



猪口「やあ、こんにちは」

猪口「いやぁ寒くなってきたと思ったらもう二月なんだな。バレンタインももうすぐだ」


榛名(えっ!? 渉、超直球なんだけど……っ!?)

めぐみ「ふふ、そうですね。チョコレートの季節です」

望月(! 彼女もバレンタインの存在、知ってる……)

猪口「君は誰かにあげたりするのかな? いるなら是非その名前を聞いてみたいところだが」

榛名(茶目っ気混じりに聞いてるよ……渉コミュ力高過ぎない……?)

神楽坂(……予想外の展開なのだよ)

めぐみ「はい、その予定ではおりま――」


SE:椅子がたーん

望月「……っ!?」

SE:椅子がたーん

榛名「……っ!?」


めぐみ「……? あの、どうかなさいましたか?」

望月「いいえ、俺達のことはお気になさらず」

榛名「そう、気分で立ち上がっただけだから気にしないで」

めぐみ「は、はい……」

めぐみ「ええと、お名前という訳ではありませんが……一応、お店に来て下さる男性の皆さんには配る予定です」

猪口「そうか、それは嬉しい。是非俺も来店しなければ」

めぐみ「そう言って頂けると、私もとても嬉しいです」


SE:静かに着席

望月「…………」

望月(……彼女らしくて、優しいですよね、はい)


SE:静かに着席

榛名「…………」

榛名(義理とか全員に配るとか考えないことにする。僕だけが貰ったって設定にして、そのチョコと一緒に棺桶入りたい)



めぐみ「あの、でも……」

神楽坂「? どうしたね、女将」

めぐみ「……皆さんには日頃特にお世話になっているので、少し特別な物を用意するつもりです」

めぐみ「なので、愉しみに待っていて下さると……その、嬉しいです……」



SE:椅子がたーん

望月「ええ、はい、是非……っ!」

SE:椅子がたーん

榛名「当たり前だよ!!すっごくすっごく楽しみにしてるから!!」

神楽坂「女将、みたらし団子を二十本追加したまえ」

めぐみ「! はい、有り難う御座います」

望月「って、調子に乗って食べ過ぎですよ神楽坂さん!!」

神楽坂「無礼講なのだよ、見逃したまえ」

猪口「良かったな」

めぐみ「ええ……く、ふふっ」


大井川 こうして俺の可愛い妹は、バレンタインを前にほんのちょっぴり自分が幸せだという実感を得たようです

大井川 当日の月の畔がどんな一日を迎えるのか……それは神のみぞ知る



終わり


大井川「……って、俺にチョコはくれないのか妹よーーーーーーーっ!!?」




ほい、そんな訳でもうすぐバレンタインデーだな。

世の女の子が一斉に春めいて色めき出すこの季節、良いよなぁ! 俺大好き!

……っと、そんなことはどうでもいいか。

遅くなったが今週も早速【月影の鎖ラジオ企画】のプレゼント第三弾だぞ~☆彡

今週のお当番は……なんとなんとなんと……俺、大井川護様だー!!!

ほらそこ!! 期待外れとか言うんじゃないのっ!! めっ!!


【 シチュエーション : 真剣に料理をしてる大井川護 】


★☆twitter(ani)


いやぁ……俺の癖に格好良くて痺れるな! なんか板前さんみたいでさ!!

この姿で寿司とか握ってみたいところだけど……

でも実際やったら急に残念になりそうだから、ここは格好良いままにしておこうっと!!

今回のシチュエーションリクエストは若菜から。若菜、数々のイケメンがいる中で俺を選んでくれて、本当にどうもありがとなっ!!

ついでにツイッターで配布中のLINEアイコンも是非使ってやってくれよな♪


という訳で、続きましてはショートストーリーの公開で~っす!

こちらのリクエストをくれた芹果も、ありがとー!!俺はめっちゃくちゃ嬉しいです!!


【 シチュエーション : ちょっと強引に主人公を奪いにいくような、大井川護の嫉妬シチュエーション 】

では、是非是非ご覧くださ~い!


「う、んん、あれ……?」

目映い西陽に目を覚まし、仕事中にうたた寝をしてしまったことに気付く。

どんな仕事にも手を抜かず全力投球しているつもりだが、やはり平穏な日常の中にある事件というのは少し退屈なものがある。

勿論、そういった日々が続くことは良いことなのだが。……これも、無い物ねだりというものなのだろう。


ふと、執筆途中の原稿と共に載せる写真が目に留まる。

それは家の庭で嬉しそうに微笑む穏やかな夫婦の写真で、若い奥さんの方はその胸に子犬を抱いていた。

行方が分からなくなっていた子犬が、自分の書いた新聞記事のお陰で見つかったのだ。

(羨ましいなぁ……)

そんな感想を抱きながら、俺は同時に自嘲を漏らした。

俺にはきっとそんな日は来ないだろう。

……いや、愛情を持って誰かを受け入れる自信はあるのだけれど。

心から、無い物ねだりが好きな自分に呆れてしまったからだ。

(……少し気分転換でもするか)



 手に入れられないものに捧げる愛は俺の心を抉り続けるのにどうしてこうもやめられないのですか



階段を降りると、徐々に聞こえ来る声は妹のそれだった。

店の客達と談笑するその話し振りは生前の螢に良く似たもので、いつもながら少し溜め息が漏れる。

けれど俺が咎めたところで、それこそ今の彼女を傷つけることにしかならないのは分かりきっている。

だが見て見ぬ振りをして通り過ぎようかと思った矢先のことだった。


『若女将は、まるで螢さんの生き写しだよ』


明確に耳に届いたのは、こんな言葉だった。

発したのは五十代くらいの男性で、それこそ螢の代からの常連だから、ある程度のことは知っている。

思わず立ち止まれば、彼は何かにつけて妹と螢を比べて“同じようだ”と話し続けていた。


(……違う)

“彼女”は“螢”ではない。

誰かの影を追い、どれだけ真似たところでその人自身にはなれないのだ。

“彼女にだけは”なれるはずがない。

そう見えるのなら、そう繕っているだけだから。


だって、そこにいるのは他の誰でもない“彼女”だ。

――螢とは血の繋がりのない“彼女”だ。


「なぁ、腹減ったー! 何か作ってー!」

俺は“今来た風”を装って、店の中へ顔を出した。

見知った顔が幾つも俺に声を掛けてくる。その顔がどれも笑顔だったから、俺も笑顔で応えた。

だがその心中は穏やかとは言い難かった。それどころか……


「あ、そうそう! お前に見せたいものがあるんだよ!」

そんなものない癖に、手首を掴んで連れて行く場所を店から連れ出しながら考えた。

何でも良かった。

けれど自然に向かった先は自分の部屋で、気付けば見せたものは先ほどまで執筆していた書きかけの原稿だった。


中途半端なそれ。

新聞記者としても特に誇れるような一面記事という訳でもないのに、他に思いつくものがなかったということなのだろう。

我ながら酷く恥ずかしかった。

……勿論、こんなところに連れてきてしまったことも。


「お兄ちゃん、頑張ってるんだね」

「……え?」

「偉い偉い。じゃあ晩ご飯は好きなものを作ってあげるね」


“……といっても家にあるもので作れるものだけだけどね”


そう言って微笑みながら、彼女はそっと俺の頭を撫でてくれた。

螢とは違う、背伸びをしなければ届かない頭の上。

その姿は確かに俺の“妹”だな……なんて思えば、何だか苦笑が漏れた。


「……? お兄ちゃん、どうかした?」

「……いや、仕事中に悪かったな。こんなくだらないことで連れ出したりして」

「……ううん。誰にでもあるよね、褒めて貰いたくなること」


最初こそ驚いた顔をしていたけれど、直ぐに再び微笑んだ彼女はそう答えた。

……だから俺も、そんな彼女の言葉に応えることにした。


「お前も、毎日良く頑張ってるよな。……いつも、有り難うな」

俺はそっと彼女の小さな頭を撫でた。

怯えた様子一つなく安心して身を任せてくれる彼女は本当に、可愛い“妹”だ。


そして仕事の途中で連れ出してしまった妹を連れ、俺は店の中に戻った。

“たまには”彼女の手伝いをするのも良いだろう。

出て行った客の食器等を集めていると、周囲の客達に笑われた。


『幾ら妹が可愛いからって、仕事中に連れ出したらダメだぞ?』……なんて。


(……本当だよ)

まるで周囲の客達に嫉妬でもしているかのような、自らの溺愛振りには苦笑が漏れる。

少しずつでも薄らいでいって欲しいこの気持ちと、俺はいつ離れられるのだろうか。

なんて想いを馳せながら、全く見える気のしない遠い未来に、

……俺は再び自嘲することしか出来なかった。

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